月乃風味
オリジナル小説サイト「ふれいば」の管理人・月乃宮のブログです♪時々こちらでも小説連載してます。
サイバーステーション (2)-1
室町晴海(むろまち・はるみ)、26歳。
元派遣社員で、現在無職。
サイステ歴二週間。
「おい、何泣いてんだ。そんなに美味いか、それ?」
スプーンを握ったまま、おいしそうに湯気を立てる不可思議な料理を前に、晴海の心は激しく動揺していた。
味がある。しかも、味わった事のない味が。
「夢、じゃないの・・・」
「あぁ?なんだって?」
「夢、じゃないんだ・・・」
どう考えても、夢と思えない状況に半パニック状態だ。
感情のたかが壊れてしまったのだろうか、涙があふれ出て止まりそうもない。
男に連れられて入ったレストランらしき場所で、晴海は料理を口にした。
温かいシチューのような料理は、五感に訴えてきた。
これは、現実なのだと。
「す、すみません・・・」
「ん?」
目の前に座る男は、頬杖ついたまま目を細めた。
晴海は唇が震えるのを抑えられない。
「すみませんが、その、状況を説明していただけないでしょーか?あたし、こんな事になるなんて、予想外だったものですから」
「なんだよ、テラから聞いてねーのか?」
「テラって、その、もしかしてあたしがサイステで会った人の事ですか?」
すると目の前の男が頭を抱えて唸(うな)った。
「何やってんだよテラの奴・・・タウの引き継ぎの時、なんも説明なしだったのかよ!」
「タウの引き継ぎ?」
「ああ、アイツにもらっただろう?タウが無きゃ、ここへ来れるわけないからな」
「タウ・・・」
サイステのゲームを思い出す。
テラと別れる際、最後にもらったアイテムがタウと呼ばれる道具だった。
「えっ!?でも、あれはゲームの話で・・・って、一体どうなってんの!?あたし、もしかしてゲームの中に入っちゃったとか!?」
「ゲームのわけないだろ。現実だよ、現実。サイステは単にこの世界・・・スィフルへの入り口にすぎないんだ。お前、今までテラとどんな会話してたんだ?」
「どんなって・・・」
衝撃的な状況でこわばっていた体から、へなへなと力が抜けていく。
晴海の手からスプーンがすべり落ちた。
―――見捨てられたんじゃない・・・だまされたんだ、テラに。
「し、親切な良い人だと思ったのに・・・」
「誰が?テラがか?」
「それで、あなたは一体誰なんですかっ!」
突然声を張り上げた晴海に、男は一瞬目を見開いた。
こうして見ると、青というより空色と言った方がいいくらい薄く透き通った瞳だ。
逆立てた金色の髪とあいまって、つくづく綺麗な男だと、晴海はこんな状況下なのに見惚れてしまう。
「俺の名はゼット。スフィルのヴァルス・バスターだ。今日からお前とパートナーを組むことになる」
「は?バスター??あの、その・・・パートナーって?」
「仕事だよ。ヴァルスの退治をするんだ。それには、お前みたいな人間が必要なんだ」
「あたしが・・・必要?」
誰かに「必要だ」なんて、言われたことがないセリフだった。
(つづく)
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必要とされているうちは、まだしあわせ・・・
元派遣社員で、現在無職。
サイステ歴二週間。
「おい、何泣いてんだ。そんなに美味いか、それ?」
スプーンを握ったまま、おいしそうに湯気を立てる不可思議な料理を前に、晴海の心は激しく動揺していた。
味がある。しかも、味わった事のない味が。
「夢、じゃないの・・・」
「あぁ?なんだって?」
「夢、じゃないんだ・・・」
どう考えても、夢と思えない状況に半パニック状態だ。
感情のたかが壊れてしまったのだろうか、涙があふれ出て止まりそうもない。
男に連れられて入ったレストランらしき場所で、晴海は料理を口にした。
温かいシチューのような料理は、五感に訴えてきた。
これは、現実なのだと。
「す、すみません・・・」
「ん?」
目の前に座る男は、頬杖ついたまま目を細めた。
晴海は唇が震えるのを抑えられない。
「すみませんが、その、状況を説明していただけないでしょーか?あたし、こんな事になるなんて、予想外だったものですから」
「なんだよ、テラから聞いてねーのか?」
「テラって、その、もしかしてあたしがサイステで会った人の事ですか?」
すると目の前の男が頭を抱えて唸(うな)った。
「何やってんだよテラの奴・・・タウの引き継ぎの時、なんも説明なしだったのかよ!」
「タウの引き継ぎ?」
「ああ、アイツにもらっただろう?タウが無きゃ、ここへ来れるわけないからな」
「タウ・・・」
サイステのゲームを思い出す。
テラと別れる際、最後にもらったアイテムがタウと呼ばれる道具だった。
「えっ!?でも、あれはゲームの話で・・・って、一体どうなってんの!?あたし、もしかしてゲームの中に入っちゃったとか!?」
「ゲームのわけないだろ。現実だよ、現実。サイステは単にこの世界・・・スィフルへの入り口にすぎないんだ。お前、今までテラとどんな会話してたんだ?」
「どんなって・・・」
衝撃的な状況でこわばっていた体から、へなへなと力が抜けていく。
晴海の手からスプーンがすべり落ちた。
―――見捨てられたんじゃない・・・だまされたんだ、テラに。
「し、親切な良い人だと思ったのに・・・」
「誰が?テラがか?」
「それで、あなたは一体誰なんですかっ!」
突然声を張り上げた晴海に、男は一瞬目を見開いた。
こうして見ると、青というより空色と言った方がいいくらい薄く透き通った瞳だ。
逆立てた金色の髪とあいまって、つくづく綺麗な男だと、晴海はこんな状況下なのに見惚れてしまう。
「俺の名はゼット。スフィルのヴァルス・バスターだ。今日からお前とパートナーを組むことになる」
「は?バスター??あの、その・・・パートナーって?」
「仕事だよ。ヴァルスの退治をするんだ。それには、お前みたいな人間が必要なんだ」
「あたしが・・・必要?」
誰かに「必要だ」なんて、言われたことがないセリフだった。
(つづく)
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必要とされているうちは、まだしあわせ・・・

